2015年2月13日金曜日

語学学習と必要な絶対時間数とは

本人は英語が苦手。そういった話しを良く聞きます。はたしてそれは本当でしょうか。もし、本当だとしたら何が原因なのでしょう
-日本人は英語が苦手なのではなく、圧倒的に学習時間が足りない
まず、現在の日本の学校教育では何時間英語の授業を受けているかを述べたいと思います。中学では平均して350時間、高校では450時間。つまり800時間です。仮に大学で1年次、2年次ともに2コマ英語をとったとしても180時間となり、大学まで含んでも計1000時間ということになります。

一方、子どもが3歳半までに母国語に接触する時間は最低でも3000時間と言われていますので、これと比べると極めて少ないことになります。皆さんもご存知のように、全ての子どもはほぼ1年間、言葉をひたすら聞いているだけで自分からは話さない沈黙期間があります。3歳半程度で、ある程度の日常会話がなりたつことを考えると800時間では足りないのは明白な事実です。つまり、日本人は英語が本質的に苦手なのではなく、今の学校教育だけでは英語学習の絶対時間数が圧倒的不足しているだけなのです。

-日常会話に困らないレベルになるためには、「2000時間」が必要
ではどれくらいの時間数が必要なのでしょう。アメリカ国務省付属機関のForeign Service Instituteによると『言語系列が遠い日本語と英語では、話す能力として日常会話にほとんど差し障りがないレベルに達するまでに、2400-2760時間が必要』としています。
 他にも40年近く国策としてフランス語と英語のバイリンガル教育をしているカナダでは、イマージョン教育の長年に渡る経験から『ときおり辞書の助けを借りる程度で新聞や興味のある本が読め、テレビやラジオを理解し、会話の中でまずまずの応対が出来るレベルに達するには2100時間が必要』としています。カナダの場合、幼稚園から始めて小学校56で学習時間が5000時間近くに達している生徒達も多くいます。彼らの「聞く力」「読む力」は母語話者レベルに達し、「話す力」「書く力」では母語話者レベルに近づくという結果がでています。
  実際に私は29年間、たくさんの子どもたちの成長を見てきましたが、子どもたちは『2000時間』の壁を越える頃には日常会話にほとんど差し障りのないレベルになり、さらに『5000時間』の壁を越えると英語脳で考える>ようになっています。
 
 -聴覚がするどい3歳からはじめると、「聞く力」「話す力」に差がでる
  2000時間と一口で言っても、多大な時間数で、仮に、海外に移住し、現地に住み、18時間、その言語に触れながら生活するとしても単純計算で1年間。日本で、小学校1年生から毎日1時間英語の学習をしたとしても、2000時間に到達する頃には高校生になっていることになります。容易なことではありませんが、最低限、その程度の時間を費やさなければ日常会話に差し障りのないレベルの英語力にはならないのです。
  ちなみに外国語の習得は年齢の低いうちから始めるべきかという議論もあります。カナダのイマージョン教育からの調査では、幼稚園の年少から語学学習を始めた生徒達は「聞く力」と「話す力」が秀でているという結果が出ています。つまり開始年齢が早く、学習時間総数が多くなれば多くなる程、『対話力』においては有利だということです。これは、聴覚が最もするどいのが3歳ぐらいだと言われていることと関係していると思われます。

 -何歳までに2000時間を達成するか?保護者ははっきりと目標を定めることが大事
 言語習得を本気で考えているのであれば、最低でも2000時間は英語で脳に刺激を与えられる環境が必要です。確実にその時間を費やす以外、どんな早道もほぼありません。同時に、絶対時間数に比例して確実な結果がでるとも言えます。何歳から学習を開始するか、何歳までに2000時間に到達させるか、また次の段階の英語脳で考えられるようになる5000時間まで到達することを目標とするかは各個人の選択ですが、もし子どもに言語習得をさせたいと真剣に考えているのであれば、保護者ははっきりとした目標を定めて、この『必要な絶対時間数』をどう子どもに提供していくのかを考える必要があります。